在日コリアンは根無し草というウソ

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※以下は1998年5月に『民団新聞』に連載した記事を再掲したものです。

 「在日韓国人は日本人よりも職業的地位が不安定なため転職が多い」「在日韓国人は日本人よりも生活が不安定なため転居が多い」――筆者がよく耳にする二つの通説である。しかし実は、これらの説は完全に事実と違っているか、あるいは事実と正反対なのだ。
 在日韓国人の過半数は「自営」である。考えてみてほしい。固定客を中心とする飲食店や小規模小売業が、そうそう店舗の場所を変えられるかどうか。また、周知の通り自営業は世襲されることも多い。その際、土地や顧客を受け継ぐとなれば、自ずと地域的な移動は制約されるはずだ。在日韓国人の職業生活を考えるなら、日本人より転居(地域移動)が多いという主張は、もともとまるっきり根拠が薄弱なのである。
 連載の第二回目でも間違った通説を紹介したが、なぜ、このような通説がまかり通っているのか。その謎を解く鍵は〝一世の記憶〟にある。日本人より学歴が低く、転職回数が多く、地域移動の多い時期が、かつて確かに存在した。その時期を実際に体験しているのはほとんど一世だけであり、解放後に生まれた世代はもはや該当しない(地域移動については図1)。しかし、その時期の記憶が〝神話〟となって、あたかも現在の事実であるかのように語り継がれているというわけである。
 現在の在日同胞をめぐる状況をきちんと理解するためにも、かつての苦難の歴史は語り継がれなければなるまい。しかし、そのことによって事実を見る目が歪んでしまっては本末転倒である。今や、事実は事実として理解すべき時期にあるのではないだろうか。そうして見えてくるのは、「在日韓国人は日本人以上に地域社会に根を張り、地道な経済生活を営んできたのだ」ということである。
 地域社会に根を張っているさまは他の面からも窺える。「この地域や町内でする行事(清掃、廃品回収、運動会など)には参加するほうだ」(以下、この設問は「地域活動への参加」と略)に〝そう思う〟と答えた者が五六%。「この地域のためになることをして役に立ちたい」が五七%。「事情がゆるせば、ずっとこの地域に住んでいたい」にいたっては、六〇%の者が〝そう思う〟と回答している。
 日本人を対象にした全国調査の中にこれと比較できるような質問項目が見あたらないため、民族間の比較はできないが、この値は低いものではなかろう。日本人以上に地域社会に根を張り、そして地域に強い愛着心と貢献の意欲を持つ――それが在日韓国人の平均的な姿なのである。
 ところで、地域社会といえば過去数年にわたって懸案になっている地方参政権の問題がある。ついでに、地方参政権に関する分析結果についても触れておこう。
 日本人のなかには、〝在日韓国・朝鮮人は日本ぎらいに違いない〟という意見を持つ人が少なくない。参政権問題に絡んで、日本の国会でもこうした議論があったように記憶している。ようするに、反日感情を持つ輩には、たとえ地方といえども参政権など与えられないという主張である。しかし、在日韓国・朝鮮人が日本ぎらいに違いないというのは、完全な誤解ないし偏見である。なぜなら、「日本」に「愛着を感じない」と回答する人は1割もおらず、しかも「大韓民国」や「在日韓国・朝鮮人」よりも「自分が生まれ育った地域」に「愛着を感じる」と回答する人のほうが多いのだから。
 本調査において、地方参政権の獲得を望むかどうかともっとも強い関連を示したのは、上述した「地域活動への参加」であった。さまざまな項目間で関連を調べてみたが、「地域活動への参加」との因果関係の強さは圧巻であった。つまり、普段から地域活動に参加し、今以上に愛着を持てる地域を創りたいと願う人、今以上に地域への貢献を求めている人ほど、地方参政権を求めているということなのである。それは、日本に定住してきた/いくということの自然な帰結と言えるかもしれない。
 われわれはこれまで、〝一世の記憶〟にしばられ、差別や不平等ばかりを訴えてはこなかっただろうか。そしてその不平を逆手に取られ、理不尽な偏見を日本社会に温存させてはこなかっただろうか。在日韓国人が差別や不平等を努力と能力で突破し、日本人以上に地域社会に根を張り、そして地域に強い愛着心と貢献の意欲を持つということを、アピールする努力を怠ってきたのではないだろうか。
 調査報告書には、この連載では触れることのできなかったさまざまなトピックが取り上げられている。ぜひご一読のうえ、このことについて考えていただきたい。報告書を入手するには、在日韓国青年商工人連合会に連絡するか、インターネットでhttp://www.han.org/a/ssc/へどうぞ。

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このページは、mskimが2018年4月17日 11:44に書いたブログ記事です。

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