わかりにくいレイシャル・ハラスメント #2 二次加害の場合

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 前回に引き続き、「連鎖」を題材にレイシャル・ハラスメントについて考えていきます。告発を受けたAさんも上司も、それぞれのふるまいがレイシャル・ハラスメントに相当するということに気づかなかったのはなぜかという問題です。

(2)二次加害の場合

 「連鎖」のケースでは、(1)→(2)の時点では、まだBさんは「レイシャル・ハラスメント」だとは認識していない可能性が高いです。そもそも、「きみはクマさんみたい」という発言そのものは「レイシャル」ですらありません。

 このケースがレイシャル・ハラスメントとなりうるのは(3)の時点からです。つまり、「差別的表現としても用いられているので、やめてもらえませんか」というやわらかい告発を強く拒絶したことによって、はじめてレイシャル・ハラスメントとしての要件を満たしたわけです。

 しかし、この時点でハラスメントの要件が確定したとはいえ、Bさんにとっては、この時点ですでに、被害体験と被害感情を否定されるという二次被害を受けた状態です。AさんとBさんの事実認識は、一段階ずれています。

 この「ずれ」、すなわち「ひとつ」の発言が「二次」加害を構成しうるという構図が、「連鎖」のケースでレイシャル・ハラスメントをわかりにくくしている原因の一つです。

 次に、上司の対応を見てみましょう。(6)の段階で、上司がBさんの訴えを「なかったこと」として扱ってしまいました。理由はわかりません。Aさんの訴えに共感したか、あるいはたんに面倒だと思ったか。

 いずれにせよ、重要なことは、ここでも、上司は訴えを放置するという「ひとつ」の行為を選択しただけですが、Bさんにとってはそれがすでに「二次」被害になってしまっているということです。そして、上司は、自分の選択がすでに加害性を持っているということに気付かず、人事異動でBさんの配置を変えるという判断をしたことで、ハラスメントの要件を確定させてしまいました。

 被害を訴えるというのは、とてもしんどい行為です。訴えるためには被害を追体験しなければなりません。傷を見せるというのは自分の弱さをさらけ出すことでもあるので、それ自体に痛みを伴います。また、誰って、好き好んで揉めごとなど起こしたくありません。面倒くさいやつだと思われる危険性だって犯したくありません。

 それでも訴えるというのは、すでに何重にも被害が蓄積していて、やむにやまれず必死の叫びを上げるようなもの。それを拒絶されたときのショックは、一次被害に勝るとも劣らない苦痛を被害者に与えます。

 にもかかわらず、加害者にとってはただ一度の言動にすぎなかったりするわけで、その「ずれ」がハラスメントをわかりにくくしてしまいます。

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 まだ他にも、告発を受けたAさんや上司が、それぞれのふるまいがレイシャル・ハラスメントに相当するということに気づかなかった理由が残っています。次回に続きます。

 なお、今回のテーマについては、こちらのまとめも参考に。

【告発を無力化する話法】 - Togetterまとめ http://togetter.com/li/169946 



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このページは、mskimが2015年6月 3日 10:54に書いたブログ記事です。

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