法的概念としてのハラスメント、社会学的概念としてのハラスメント

| コメント(0) | TB(0) このエントリーをはてなブックマークに追加
 セクシュアル・ハラスメントという言葉が日本に輸入されたのは、周知のように1980年代末の裁判闘争を通じてのことであった。その後、1999年4月には改正「男女雇用機会均等法」の施行によってセクシュアル・ハラスメントの防止が事業主に義務づけられた。また、同年3月には「文部省におけるセクシュアル・ハラスメントの防止等に関する規程の制定について」が出されたことを踏まえ、各大学においてセクシュアル・ハラスメントの防止等にむけた積極的な取り組みが進めらるようになった。

 そうした経緯もあって、セクシュアル・ハラスメントといえば法律用語であると解釈している人も少なくないようである。

 しかし、セクシュアル・ハラスメントという言葉は、職場や学校の中だけでなく、一般社会での不当な性的言動を意味することもある。例えば、特に組織に所属していない友人間であっても、恋愛経験を執ように尋ねたり、私生活に関する噂などを意図的に流したりすれば、「セクハラだ」として告発の対象になりえる。あるいは、ツイッターで女性のユーザーに対して執ように性的なからかいの言葉をぶつけたり、ヌードの画像を送りつけたりすれば、多くの人が「セクハラだ」と認識するだろう。

 ようするに、セクシュアル・ハラスメントは、法的な概念として用いられるだけでなく、性的に尊厳を傷つけられる不正義を総合的に指し示す社会学的な概念としても広く用いられているということだ。

 しかし、残念ながら、レイシャル・ハラスメントについては、日本ではそれを明示的に禁じる国内法がまだ整備されていないため、法的な概念か社会学的な概念かという区分を論じる以前の段階にとどまっている。セクシュアル・ハラスメントのように、不正義を告発する社会学的なツールとしての役割を果たすようになるまでには、まだまだ相当に長い年月がかかりそうな気配である。

 次回からは、「レイシャル・ハラスメントだ」との訴えが聞き届けられず、逆に非難の対象となった事例を紹介していく。

前のエントリー3件

次のエントリー3件

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://han.org/blog/mt-tb.cgi/343

コメントする

このブログ記事について

このページは、mskimが2015年5月29日 21:54に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「レイシャル・ハラスメントのターゲットは学生だけではない」です。

次のブログ記事は「わかりにくいレイシャル・ハラスメント #1 悪意をともなわない場合」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。