レイシャル・ハラスメントのターゲットは学生だけではない

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 厚生労働省の指針ではセクシュアル・ハラスメントを次の二つのタイプに分けています。

  1. 対価型セクシュアル・ハラスメント
    職務上の地位を利用して性的な関係を強要し、それを拒否した人に対し減給、降格などの不利益を負わせる行為。

  2. 環境型セクシュアル・ハラスメント
    性的な関係は要求しないものの、職場内での性的な言動により働く人たちを不快にさせ、職場環境を損なう行為。
 ここで注意が必要なことは、「対価型」(別名「地位利用型」)は職場での地位に格差があることがセクハラの構成要件とされているのに対して、「環境型」のほうは地位に格差がなくともセクハラになりうるということです。例えば、同じ平社員同士であっても、あるいは部下から上司に対してであっても、環境型セクハラは成立します。

 例えば、法務省のパンフレットでは、以下の様な事例が「環境型ハラスメント」の典型として挙げられています。●性的な話題をしばしば口にする、●恋愛経験を執ように尋ねる、●宴会で男性に裸踊りを強要する、●特に用事もないのに執ようにメールを送る、●私生活に関する噂などを意図的に流すなど。いずれも、職場での地位とは無関係になされうることがわかると思います。

 レイシャル・ハラスメントについても同じことが当てはまります。こちらの記事で、米国の司法ではレイシャル・ハラスメントを認定する上で「敵対的環境」の有無が焦点になりやすいと書きましたが、それは、レイシャル・ハラスメントの多くが「環境型ハラスメント」として起こるためです。そして、環境型ハラスメントである以上、地位に格差がなくともハラスメントは生じます。同じ学生同士であっても、あるいは学生から教員に対してであっても、レイシャル・ハラスメントは成立します。

 最近の事例だと、以下の様なものがありました。

  • 某大学の授業で、在日コリアン教員がシラバスに即して朝鮮学校のことを扱ったところ、後日、学生に嘆願書への署名を強要させたという虚偽の情報がインターネット上に出回った。それを右派議員がキャッチし、文部科学省に照会、さらに文科省がその大学にヒアリングし、当該大学は「学生に誤解を与えた」とする声明をウェブページに出した。某新聞がそれを記事化し、さらに騒ぎは拡大した。

  • 某大学の授業で日本軍「慰安婦」問題に関するドキュメンタリーを上映した在日コリアンの教員について、受講生が「内容が一方的」と某新聞に投書し、それを同紙が記事化した。インターネット上でバッシングが盛り上がり、大学に数百件の電話が寄せられた。
 これらは学内で完結せずに、学生・大学当局、文科省、政治家、マスメディアという多様なプレイヤーが関わって被害が拡大した事例です。

 筆者自身も学生からレイシャル・ハラスメントを受けたことがあります。嫌韓的な右翼思想に染まった学生がゼミに配属されてきたときのことです。学力不振により第5志望での配属でした。望まないゼミに配属された学生もかわいそうではありますが、その学生はわたしが「反日」「左翼」の思想を押し付けるものだと勘違いをし、ゼミに出席すらせず保護者を巻き込んで差別的な文書を各方面に送付したりしたのでした。

 その時に私がどのような感情を体験したか、すでにツイッターに投稿したことがありますので、まとめを紹介します。

「教え子からヘイトスピーチをくらったとき、教員がどういう気分になるか」 - Togetterまとめ http://togetter.com/li/670039 @togetter_jpさんから

 学生からハラスメントを受けると、教育者として教え導く役割と、差別の被害を受けたマイノリティとしての役割とに引き裂かれることになるため、同僚からハラスメントを受ける場合以上にしんどい体験となりえます。

 立場の弱い学生が教員からハラスメントを受ける場合も深刻な被害を生じますが、また別の意味で、教員が学生からハラスメントを受けた場合も被害は軽微では済まないということです。

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このページは、mskimが2015年5月28日 10:40に書いたブログ記事です。

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