「寝た子」はいつかかならず起きる

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 鳩山元総理が、普天間基地の問題解決に前向きに取り組もうとして挫折したことは周知の通りです。

 一方で、沖縄に軍事基地が集中している状況について、国連の人種差別撤廃委員会が日本政府に改善を勧告していることをご存知でしょうか。それも、過去に何度も繰り返し「差別的」だと明言してのことです。

 人権問題などニュースバリューにならないということか、はたまた「国益」にならないという判断なのか、マスメディア各社はこの事実を積極的には報道してきませんでした。それどころか、沖縄の米軍基地負担を「仕方がない」と論じ、鳩山元首相に対しては「寝た子を起こしてしまった」と批判するケースが多かったようです。

 しかし、この問題は「仕方がない」で済まされることではなく、日本が批准している条約上、違法性が高い人権侵害だと国連から指摘され続けていることを知るべきでしょう。

 ところで、差別問題を研究している者にとって、「寝た子を起こすな」という主張はたいへん馴染みの深いものです。その類の主張を聞いたことのない差別研究者はモグリと呼んでかまわない――といえるほど、日本で差別が語られるときに一般的なスタンスだからです。代表的な語りを2つ紹介しましょう。

「差別だと騒ぎ立てるから、いつまでたっても問題が持続してしまうのだ。」
「些細なことを差別だと指摘したりせず、じっと静かにしていれば、そのうち差別など消えてしまうだろう。」

 上述の通り、これらはたいへん一般的な主張です。しかしながら、それをそのまま真に受ける差別研究者は、まずいません。なぜなら、すでに各種の調査において、この種の主張はマイノリティに差別的な主張群と高い正の相関関係を示すことが確認されているからです。もっとわかりやすく言い換えると、「寝た子を起こすな」という主張をする人は差別的な傾向がある、ということです。

 ちなみに、この関係は非常に多様なエビデンスによって支持されており、人文社会科学的な命題としてはかなり頑健なものだといってかまいません。(類似の現象も参照のこと「差別する傾向のある人は差別の存在を認めない傾向がある」)

 さて、この「事実」を、沖縄の基地問題に敷衍すると、どういうことになるでしょう。行為の次元が異なるため、単純に同一視するのは慎重であるべきかもしれません。

 しかし、いち社会学者としての個人的な直感を述べるなら、鳩山元首相に対して「寝た子を起こしてしまった」と批判したマスメディア各社は、どうしても、沖縄への差別意識を垂れ流しているように思われて仕方がないのです。そう考えたとしても、ムリはないと思いませんか?

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コメント(8)

違和感があったのでコメントさせていただく。

>鳩山元総理が、普天間基地の問題解決に前向きに取り組もうとして挫折したことは周知の通りです。
これはまぁ良いとして(今となってはこれもその場限りのポーズだった気もするが)、今回、鳩山総理が普天間軍基地移転において、支持を失ったのは、この問題が差別問題だったからではなく、「見込みがないのに、沖縄の方々に過剰な期待を持たせ、自民が創り上げた案を崩壊させ、最終的にはその劣化案としてまとめざるを得なかった」からである。
発言も行動も何も信頼するに値しなかったというだけであって、この問題に切り込んだから、支持を失ったというのは因果関係がないと考えるがいかがだろうか。純粋に総理の政治手腕の問題であろう。「最低でも県外」には沖縄県民も賛成していた。それを裏切ったというだけである。

そもそも、振り返ってみるに、特に麻生政権とのマスコミの反応を比較すると、マスコミは、ほぼ一貫して鳩山内閣には、それほど厳しくは当たらなかったと感じている(漢字の読み間違いやカップラーメンの値段であれほど叩かれた総理もいまい)。末期的な状況になるまでは、比較的友好的な報道が多かった。
そのような状況で、総理自身の政治手腕問題には踏み込みたくはないマスコミの落しどころが「寝た子を起こす」だったのではないか。

「差別」などと言われると本質が見えなくなる。さらに余計な差別意識を助長するようにすら見えるため、私個人としてはこのエントリにはかなり否定的な感想を抱かざるを得ない。

「沖縄に軍事基地が集中している状況について、国連の人種差別撤廃委員会が日本政府に改善を勧告」というのは話がおかしいでしょ。改善を勧告するなら日本政府ではなく、米国政府にしなきゃ。米国政府が「沖縄の人が可哀相だから、じゃあグアムにしよ」と言ったらグアムで決まりますよ。

日本が米国に頭が上がらないことは子供でも知っているのに、あえて立場の弱い日本政府を狙って「改善を勧告」というのは弱い者いじめ。これこそが真の「差別」ですね。

「差別する傾向のある人は差別の存在を認めない傾向がある」と書いていますが、「差別する傾向のある人」と断定する人も「差別する傾向のある人」なのではないでしょうか。

>kirifuuさんへ
たまたま目にして、いささか違和感のあるコメントだったので一言申し上げます。
米軍基地問題にかかわらず、一つの事象に対しては様々な要素が関係しており、一面的に捉えるのではなく多面的に見ることが必要と考えております。
今回の金氏のエントリーは普天間基地の問題に対し、マスコミも含め差別意識的な要素がなかったかとの問題提起であり、検討する価値はあるものと考えます。
鳩山前首相の政治手腕も重要な要素ではありますが、それだけに問題を矮小化するのは、逆に本質を見ようとしない姿勢に感じるのですがいかでしょうか。

>「見込みがないのに、沖縄の方々に過剰な期待を持たせ、自民が創り上げた案を崩壊させ、最終的にはその劣化案としてまとめざるを得なかった」

この言葉が、沖縄に対し自身の優越的地位を暗に示し、「自民案でまとまりかけていたのだから、それで良いじゃないか。今更何を期待してるの?」という気持ちを表しているように思えてしまいます。
コメントを読んだだけなので、本意と違っていたなら申し訳ありません。

A「差別があることを認めないのが既に差別だ!」
B「私は親指が太いので差別を受けている! 親指が太い人間に対する差別を撤廃せよ!」
A「何を言ってるの、あんた。親指の太さで人を差別する? そんなのあり得ないね。人の親指なんかに誰が興味を持つんだ」
B「差別があることを認めないのが既に差別だ! そのような差別意識は絶対に看過できない。差別者のAは自己批判せよ!」

無論、これは喩え話である。ここではたまたま親指を喩えに持ってきたが、それ以外のどんな属性を持ってきても同じこと。差別があることを認めないのが既に差別、というドグマに固まるとこういうおかしなことになる。ちょうど、魔女裁判の被告人が魔女と自認してもしなくても魔女と断定されて処刑されたのと同じように。

みずから差別していながら差別の存在を認めないケースとは別個に、事実として差別がない場合もある。それは個々に判断すべきだ。そうでなければ「差別者」と決めつけられた人間に対する魔女狩りを招くだろう。

米側ではなく日本側が沖縄に基地を置いておきたいのがわかる記事。
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-152829-storytopic-53.html

しっかし、土人は差別が好きだねー。
被害者面して、結局は自分達が強権を振るいたいだけ。

民主党のやり方と同じなんだよな。

沖縄の軍事基地に文句を言う前に、沖縄の地理を中国から見た時にどういう位置にあるか、よく研究した方がいいな。

何が国連の人種差別撤廃委員会だよ。
潘基文の臭い息がかかった組織だろ。
お前ら土人はカンボジアやタイで何やってんだ?

沖縄に対する差別、という感覚は、一般的な日本人の心情には合致しないように思います。

もし日本における沖縄の存在・扱いを差別と考えるのが学術的な定見であるなら、それは一般的な感覚とかけ離れたあまり意味の無い議論かもしれません。

ちなみに普天間の問題に関して言うなら、96年の日米合意以降、長年にわたって交渉を重ね調査を行い積み上げてきた結論を、民主党が政権欲しさに無責任な約束を国民と取り交わし、ぶち壊してしまったというのが正しい理解だと思います。

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このページは、mskimが2010年7月17日 06:11に書いたブログ記事です。

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