補助金の公平、効率

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 すでに報道されている通り、今月11日、規制改革会議の教育・研究タスクフォースが、補助金の分配方法改正を中心とする提言書(pdf)をまとめました。以下、一部だけ抜粋。

(1)教育・研究の峻別

運営費交付金及び私学助成金については教育目的に特化することを検討すべきである。また、研究目的に交付する公費については、研究持続の安定性に一定の配慮をしつつ、競争的研究資金で充当することが望ましい。

(2)教育に関する配分基準等の見直し

運営費交付金や私学助成金の配分基準についても見直す必要がある。(中略)学生数に応じ配分額を決定する仕組みを採用することにより、結果として公費が重点的に配分されるように見直すべきである。こうした公費の配分方法を見直すときには、教育の質の担保を前提として大学・大学院の定員数を独自の判断により柔軟に設定できる制度の導入を併せて検討する必要がある。

 ようするに、こういうことです。
  1. 教育と研究がごっちゃになっているから、補助金の配分が不公平だし、非効率的だし、よけいな規制になってしまっている。
  2. 補助金は学生数で頭割りするのがスマートだ。
  3. その際、定員の枠を超えて大量に学生をかき集める大学が有利になるようにしてあげるとよい。
  4. 小規模の大学は潰れるか統合しなさい。
 なるほど、規制改革会議らしい。すべてを市場という神の見えざる手にゆだねよ。市場に任せればうまくいく。そうでないから現状はダメなのだ、という意思が鮮明に貫かれています。

 さて、提言書でいう私学助成金とは、正式には「私立大学等経常費補助金」の「一般補助」のことです。これは、?@私立大学等の教育研究条件の維持向上、?A学生の修学上の経済的負担の軽減等に資するため、大学等の経常的経費に対し、学生数、教員数および財政状況など一定の条件を基準に補助するというものです。

 たしかに、教育と研究がごっちゃになっているし、学生数だけでなく教員の数なども按分されています。その意味で、規制改革会議の提言は、論理的には整合的だといえないこともないわけです。提言の通りに実践すれば、おそらく教育効果は大きく低下するでしょうが、それなりに整然とした補助金体系を築くことはできるはずです。

 しかし、これは利潤を追求する企業ではなく、非営利的な学校法人の話です。「効率」を論じるときは、経営の効率ではなく、教育の効率のことを指すべきでしょう。

 規制改革会議の委員方はマスプロ教育がお好みのようですが、大人数の講義では、精神的に、学力的に、ついていけない学生もいるわけです。提言に従えば、そういう学生は切り捨てろ、ということになります。そういう意味での「効率」の追求は、はたして教育を論じるうえでふさわしいといえるでしょうか?

 現行の制度には、教育と研究の経費配分を各大学が決定できるという大きなメリットがあります。それによって、例えば、"研究経費を節約して人件費に回し、少人数で丁寧な教育を実現する"という教育方針を採ることができるようになります。はたしてこういう教育モデルは、規制改革会議が糾弾するように、「不公平」で「非効率的」なのか?

 入学時点では学力水準が低くても、少人数制の授業で丁寧に指導を行い、卒業時点では他学の学生に引けをとらない人材を育成するということこそ、効率的だとはいえないか?

 まぁ、この提言書は与党内部でもたいへん評判が悪いですし、教育改革会議の方針とも合致しませんので、そのまま通ることはないでしょう。ただ、喚起された世論を通じて、間接的にいろんな意思決定に影響を与えたりすることがあるのですね。100年の大計にかかわることですので、長期的な視野からじっくり検討してもらいたいものです。

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このページは、mskimが2007年5月16日 12:18に書いたブログ記事です。

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