クルーザーとアメリカン

| コメント(0) | TB(0) このエントリーをはてなブックマークに追加

ツーリング開始直後の装備なのでパッキングがいまいちこなれていないし、防水対策もいいかげん。 写真はツーリング開始直後の装備です。

 タンクバッグから出ている青いホースはタンクバッグの中の水筒につながっています。ホースの取りまわしは多少面倒ですが、これさえあれば走行中にも水分補給をすることができます。

 「今日は移動日」と決めたら、短いときで600km、気分しだいで1000km以上の距離を走るわけで、食事とガソリン補給の休憩をのぞけばハイウェイを一日走りっぱなし、なんていうこともめずらしくありません。そうすると、なにせ夏のことですから、問題になるのが水分補給です。マメに水分と塩分を補っておかないと、けっこう簡単に熱中症にかかります。こまめに休憩するか、このようにハイドレーションを装備するか、どちらかがかならず必要となります。

 さて、バイクは大別すると、スポーツ、ネイキッド、ツアラー、オフローダー、クルーザー、スクーターの6種類に分類されます(参考)。それぞれバイクの機能が違うのはもちろんですが、他にも、バイクの乗り方、バイクの楽しみ方、バイクに乗るときの装備など、さまざまな違いがあります。バイクに付随するライフスタイル、ひいては文化が違うといってもいいでしょう。

 ぼくのバイクはBMWのR1150GSといって、オフローダーとツアラーの中間的な位置づけです。イメージとしては、舗装されていようが砂利道であろうが、道を選ばずに世界中を走る旅バイク。ラフな長旅にも耐えられるように、全天候オールシーズン対応のバイクジャケットを着る人が多いです。

 スポーツバイクで峠を走る人は、革つなぎにフルフェイスのヘルメットが典型的なスタイルです。州間ハイウェイで長距離を移動するより、ワインディングの多い一般道をハイスピードで走行することを好みます。

ニューヨーク近郊のツーリングスポット「ベア・マウンテン」 クルーザー(いわゆるアメリカン)乗りは、Tシャツに革ベスト、革ジャン、ジェットヘル(ないしノーヘル)にサングラスが一般的。あまりスピードは出しません。というより、機能的にも装備的にも、スピードを出せないのです。制限速度を守って、まったりと直線道路をクルージングするのが正しい楽しみ方。

 アメリカでは、やはりクルーザーに乗る人が圧倒的に多いです。きちんと調べてはいませんが、ツアラータイプのクルーザーを含めると、実感としては少なくとも7割以上がクルーザーという印象です。

 では、なぜアメリカでそれほどクルーザーが支持されているのか。

 理由はたくさんあります。たとえば、いまのクルーザーの基本的なデザインは、1920年代にはすでに完成していました。Indianやハーレー・ダビッドソンの手による製品群は、第二次世界大戦ごろまで世界的な影響力をもち、多くの模倣を生み出しました。それから時代は変わっても、現在に至るまで一貫してあのスタイルの製品を提供してきたメーカーがアメリカにつねに存在してきたこと。それが理由の一つ。

 また、広大な土地柄、地平線まで続く直線道路はめずらしくありません。直線道路を長距離走行するとなれば、クルーザーかツアラーが有利ということになります。バイクの機能と国土が適合的というのが理由の一つ。

 より重要なのは、ライフスタイル。上でクルーザー乗りのスタイルは、Tシャツに革ベスト、ジェットヘルにサングラスと書きました。このスタイルは、1960年代に非合法活動で悪名をとどろかせたバイカー集団Hells Angelsで一般的だったものです。当時はハーレーといえばHells Angelsのことだったといいます。時代は変わって、Hells Angelsもほとんど非合法活動をしなくなりましたが、そのスタイルにまつわるワルっぽいイメージだけは今に息づいているわけです。さまざまな規制に管理された日常を抜け出し、自由を謳歌したいというとき、このちょいワルなスタイルが一つの手がかりになるということでしょう。男も女も、クルーザー乗りはみょうに体格がいいんですよね。マッチョがクルーザーを選ぶのか、クルーザーに乗るためにマッチョになったのか。

 そして、非日常として旅を求めるアメリカの心性を指摘しなければならないでしょう。バイクを使って日常を抜け出すとしても、サーキットや峠を走る、ドラッガーで直線番長を競いあう、トライアルバイクで岩山を登る、ダートをモトクロスでぶっとばす、荷物を満載して旅に出る、等々、いろんな手段があります。しかし、その中でも、アメリカでは特に長距離の旅に出ることに対して、「フロンティア・スピリットの実践」「自由を求めての挑戦」といった特有の意味づけがあるように思います(「ルート66」も参照)。そして、アメリカで長旅に出るとなれば、やはりクルーザーかツアラーです。

 さらに、以上のすべてを総合する、ハーレー・ダビッドソンのマーケティング。ハーレー・ダビッドソンは1981年に再生して以来、さまざまな経営戦略を展開し、つねに好調な販売を維持し続けてきました。その手法の一つが、バイクを売るだけでなく、バイクの楽しみ方を紹介するというマーケティング方法です(日本法人の例)。バイクを通じて、アメリカのライフスタイルを、そしてアメリカの夢を売るというわけです。

 他にも、流通やナショナリズムの問題など、いろいろと理由をあげることはできますが、ようは、さまざまな理由がからみあって、「アメリカのバイクといえばクルーザー」という環境を作り上げ、市場を形成し、人々の消費意欲を掻き立てる好循環が成立しているということです。

 ただ、マッチョなアメリカ人って、どうもぼくとは相性がよくない人が多くてね。いや、アメリカ人にかぎらず、体育会系のりがニガテなんですが。

 もちろん、バイクに罪はないですよ。ぼくもクルーザーというバイク自体は好きですし。

前のエントリー3件

次のエントリー3件

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://han.org/blog/mt-tb.cgi/162

コメントする

このブログ記事について

このページは、mskimが2007年5月 1日 19:00に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「パリセーズ」です。

次のブログ記事は「アメリカとカナダの通関」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。