13. 権利 
中原洪二郎 

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13.1 はじめに   

 日本人にとっては当然の権利であっても,在日韓国人には認められいないものが数多くある。日本政府の立場からすると,その根拠は,在日韓国人は「外国人」であって,「日本人」ではないから,という一点につきる。しかし,在日韓国人は観光のために短期滞在しているわけではない。在日韓国人にとって日本での生活はまさに日常そのものであり,日本で生まれ,あるいは日本で暮らし,あるいは日本で死んでいく,取り替えの効かないそのものずばりの生活の場なのである。その点で,在日韓国人にとって権利の問題はきわめて重要であり,外国人だからというひとくくりで論じるべきではない。   

 また「権利」の問題は,必ずしも意向の問題ではない。必要なものについては獲得し,そうでないものは獲得しないという,狭義の合理性のみによって語られるべきではない。時には,在日韓国人のほとんどが「自分には必要でない」と考えていたとしても,それが権利の取捨選択の根拠には必ずしもならない。しかし同時に,権利を意向という観点から理解することは,在日韓国人が抱える現実を理解することにつながる。そういった意味では,今回の分析は,在日韓国人にとって,どの権利が必要か,という議論を目指したものではなく,権利というものを通して,在日韓国人の現実を浮き彫りにしようとするものである。   

 では,在日韓国人自身は,自らの権利について,どのような権利を必要と考えているのだろうか。この調査では,在日韓国人と関係が深く,かつ行使が制限されている,あるいは制約を受けていると考えられる12の権利について,個人的な必要性(問40a)と在日韓国人全体にとっての必要性認知(問40b)を質問している。12の権利とは,1. 日本の地方自治体の選挙で投票する権利(日本地方参政権),2. 日本の国政選挙で投票する権利(日本国政参政権),3. 韓国の地方自治体の選挙で投票する権利(韓国地方参政権),4. 韓国の国政選挙で投票する権利(韓国国政参政権),5. 日本人と同じように公務員に採用される権利(公務員採用),6. 日本人と同じあらゆる職業につける権利(職業機会),7. 日本人と変わらない社会保障を受ける権利(社会保障),8. 外国人登録証をいつも携帯していなくてもよい権利(登録証不携帯),9. 外国人登録証の廃止(登録証廃止),10. 日本への帰化が簡単に出来る権利(帰化簡易化),11. 民族教育を受ける権利(民族教育),12. 日本人と同じ教育を受ける権利(一般教育)である(かっこ内は略記)。   

 10番目の帰化簡易化を「権利」とみなすことについては,一般通念に照らして違和感があるかもしれない。しかしながら,日本国籍を取得したうえで積極的に国民としての権利を行使し,民族的マイノリティの権益を擁護すべきだとの意見が少数派ながら存在することを考えて,項目に含めてある(1)。   

13.2 年齢と世代による権利要求の違い   

 まず,これらの権利の個人的な必要性について概観してみよう。図1.は世代ごとに「必要だ」と回答した人の割合をあらわしたものである。   
(単位%,かっこ内は基数,複数回答)


図 13-1 世代ごとにみた「自分に必要な権利」 
(単位%,かっこ内は基数,複数回答)
図 13-2 年齢層ごとにみた「自分に必要な権利」 

 各権利の順序は,全体で必要と回答した比率が高い順に左から並べてある。大まかな傾向として,多くの人が必要だと考えている項目ほど,世代間の意向の差が小さくなっているように見える。たとえば,社会保障や職業機会,登録証不携帯といった権利については,70%以上の回答者が「必要だ」としており,世代の差は小さいが,一般教育,民族教育については1世,2世,3世それぞれの差が,韓国国政参政権,韓国地方参政権については,1世と2世および3世の差が大きくなっているのがわかる。   

 では,年齢ごとに見るとどうだろうか(図2)。   

 世代ごとでは,差違があまり見られなかった,必要性上位の社会保障,日本地方参政権,職業機会については,やや年齢差が認められる。また,民族教育,一般教育についても,世代ごとよりも年齢による分類の方が,必要性の差がはっきりと見られるようである。登録証不携帯や公務員採用については,世代による分類でも年齢による分類でも,あまり必要性に差が見られない。   

 このような見方は,権利に関する従来の議論をある程度裏付けるものではある。年齢が高くなれば保障は切実な問題であるし,韓国で生まれた1世にとっては,韓国での参政権が重要な意味を持つだろう。在日韓国人すなわち日本人ではないという帰属意識があるならば,日本全体についての政治参加よりも,自らが居住する地域の行政に関わる参政権をより重視するだろう。そして投票行動において,年齢が高い人々の方が投票率が高いのも知られた事実であるし,日本地方参政権について年齢差が生じるのも頷ける。   

 しかし,権利の必要性という問題を年齢と世代という観点からのみ記述することは,問題の矮小化につながる。図1と図2は,確かに年齢や世代による差違を推測させるものではあるが,その背景まではわからない。なぜ差が生じているのか,あるいは生じているように見えるのかを知るためには,さらに高度な分析が必要となる。   

 そこで,もう少しつっこんだ分析をしてみよう。確かに,世代と年齢という観点は,在日の権利を考える上で重要なものである。12の権利を必要と回答する確率を説明する変数として,一般的属性,民族的属性,民族的経験,心理的要因の4変数群を設定し,それぞれの権利を必要だとする回答を説明するのに適切な変数を探索的に選び出してみる。それぞれの変数群に含まれる変数は,以下の通りである。   

<権利の必要性の認知に影響すると考えられる諸要因>   

●一般的属性   

年齢,収入,教育年数,職業8分類   

●民族的属性   

世代,民族教育年数(学校)(問13),民族教育(学校外)(問14)   

●民族的経験   

15歳時点での同胞集住状況(問25a),現在の同胞集住状況(問25b) ,15歳時点での年間チェサ回数(問27a),民族風結婚式の頻度(問27b),民族的行事(問27c),両親の民族意識認知(問27d),差別体験(問36)   

●心理的要因   

愛着(問39),地域コミットメント強度(問43)   

13.3 日本の参政権   

 12の権利をそれぞれ被説明変数とし,ロジスティック回帰分析を行った。なお,尤度比による変数増加法を適用し,それぞれの権利を説明するのに適切な説明変数を選び出した。分析の結果は,上に示された変数同士の,いわば力比べのようなものなので,最終的に説明変数として選ばれなかったからといって,その変数が被説明変数にまったく関連していないというわけではない。しかし同時に,選ばれなかった変数は,少なくとも被説明変数を説明するのに十分な力を持っていないともいえる。   

 では,それぞれの項目について検討していこう。まず「日本地方参政権」についてだが,この権利を必要だとする比率は全体で8割にのぼる。また図1,2で見ると,世代差よりは年齢差の方がやや大きいように見える。しかし,分析の結果は,年齢差の存在を示さなかった(表1)。   
表 13-1 日本地方参政権 
係数   Waldχ   
民族風結婚式の頻度   .1508    4.1086*  
北朝鮮愛着   −.3316    8.5210**  
統一祖国愛着   .3532    10.9870**  
地域活動参加   .3113    11.4025**  
定数   −.6150   1.9664  
―2LL=489.163 χ248.822** Nagelkerke=.129 ** p<0.01 * p<0.05   
 まず簡単に表の見方を説明する。注意点は係数の符号の向きとWald統計量の大きさである。たとえば,民族風結婚式の頻度の係数は,プラスであるので,この頻度が高いことが,日本地方参政権を必要だと回答することを支持しているということである。逆に,マイナスになっている北朝鮮への愛着は,愛着が強いことと,日本地方参政権を必要としないことに関連があることを示している。また,Wald統計量の大きさが大きい変数が,より強く日本地方参政権を規定していることになるので,もっとも規定力の大きい変数は,地域活動参加だということになる。Wald統計量の右に星印が示されている変数が,統計的にみて,日本地方参政権を説明しているといえるものである。   

 さて,表1によれば,北朝鮮あるいは統一された祖国への愛着がマイナスとプラスに働いていることがわかる。重要なのはその符号の方向ではなく,「日本」への愛着が,「日本」地方参政権を必要だとする回答に影響を与えているとはいえないことである。もう一つの変数,地域活動への参加(この地域や町内でする行事(清掃,廃品回収,運動会など)には参加する方だ)が含まれていることを見ると,日本地方参政権を必要だとする回答者は,地域住民としての地方行政への参加を志向しており,しかもその背景には,民族的な意識が存在していると考えられる。   

 このような傾向は,地方参政権だけでなく国政参政権についても見ることができる(表2)。ただし,日本地方参政権とのもっとも顕著な違いとして「世代の効果」がある。

表 13-2 日本国政参政権 
係数   Waldχ   
世代   10.9519*   
戦前1世   .1448    .1393  
戦後1世   .3454    .4069  
2世   -.5964    8.9291**  
2-3世   .2003    .4176  
3世   -.0941  
民族教育年数(学校)   -.0610    4.0883*  
年間チェサ回数   .0956    6.5268**  
統一祖国愛着   .2267    7.0771**  
地域活動参加   .2394    9.2279**  
定数   -1.0286    5.6259*  
−2LL=646.920 χ243.116** Nagelkerke=.108 ** p<0.01 * p<0.05 

 「日本国政参政権」という権利について,「15歳時点での年間のチェサの回数」や「民族風結婚式が身近で行われた頻度」がプラスの影響を持っているというのは,一見奇異に見えるかもしれない。実は,参政権以外の権利についても,民族的経験の有無が規定力を持っている項目が多く存在している。民族的経験の有無が,権利に対する意識を広範に高める効果をもっているのであろうか。   

 世代について見ると,2世についてのみ統計的に有意な影響が認められている。また,他の世代の係数がプラス(3世は0といってよい)であるのに,2世のみマイナスとなっている。つまり,2世であることが,日本国政参政権を必要ないと回答することと関連しているということである。これはなぜであろうか。   

 実は,分析に際して変数選択を行わず,上記に示した全ての変数が説明変数として分析に用いられている状態でも,やはり2世だけがマイナスの係数を持つ。これは,2世であること以外の,上記に示した全ての変数の影響を取り除いてもなお,2世であることに統計的に意味がある,ということである。   

13.4 韓国の参政権   

 ここで,同じように世代が影響を持つ2つの権利,韓国地方参政権と,韓国国政参政権について見てみよう(表3および表4)。

表 13-3 韓国地方参政権 
係数   Waldχ   
世代   18.2023**   
戦前1世   .6877    4.1371*  
戦後1世   .9284    4.2745*  
2世   −.6429    9.5210**  
2-3世   −.7777    3.9899*  
3世   −.1955  
両親民族意識強度   .4417    6.8023**  
統一祖国愛着   .5989    22.1008**  
定数   −4.7951    39.9958**  
−2LL=451.630 χ271.549** Nagelkerke=.203 ** p<0.01 * p<0.05  
表 13-4 韓国国政参政権 
係数   Waldχ   
世代   20.6423**   
戦前1世   .5899    2.9732  
戦後1世   1.2061    5.9287*  
2世   −.7733    14.5639**  
2-3世   −.3161    .9669  
3世   −.7066  
民族風お払い   −.3106    6.8708**  
仕事上の差別体験   −.2708    4.6636*  
統一祖国愛着   .5699    24.3999**  
定数   −2.2299    16.1519**  
−2LL=499.432 χ278.712** Nagelkerke=.209 ** p<0.01 * p<0.05   

 世代に着目してみると,こちらは日本国政参政権と異なり,非常に明確な傾向が存在していることがわかる。つまり,1世であることと韓国の地方参政権を必要だと考えることの間に関連があり,日本で生まれた2世,3世については,その逆の効果を持っているということである。この傾向は韓国の国政参政権についても変わらない。   

 日本国政参政権と2世の関係については,さらに別の観点から分析する必要がありそうである。   

 さて,世代についてはひとまずおいて,続けて韓国の地方・国政参政権について検討しよう。   

 韓国地方地方参政権で特徴的なのは,「両親」に対する認知である。両親の民族意識が強かったと認知している回答者ほど,韓国での地方参政権を必要だと回答している。この傾向は,韓国国政参政権では統計的に認められない。   

 韓国の地方参政権,国政参政権の両方を通じて読みとれるのは,統一された祖国への愛着が持つ,規定力の大きさである。ここでの愛着は,祖国の統一に対する強い希望と読み替えることができるのだろう。ただ,民族的経験がここではマイナスに効いている。   

13.5 地方公務就任権   

 さて,次に公務員として採用される権利について検討しよう。在日韓国人の地方公務員への採用は,一部の自治体で実現しつつある。

表 13-5 公務員採用 
係数   Waldχ   
民族教育年数(学校)   −.0751    5.2330*  
民族風結婚式   .2517    12.6663**  
職場差別体験   .3241    4.6161*  
日常差別体験   −.4215    8.5494**  
官庁差別体験   .3392    7.5357**  
日本愛着   .3137    8.1116**  
統一祖国愛着   .2083    5.1800*  
定数   −1.9515    10.2627**  
−2LL=538.754 χ252.574** Nagelkerke=.142 ** p<0.01 * p<0.05   

 やはり,日本の地方公務員としての採用であるから,日本への愛着の強さが関連しているのであろう。それと同時に,統一祖国への愛着が,ここでもプラスの影響を与えていることがわかる。愛着についての分析で見たように,統一祖国への愛着と日本への愛着はほとんど無相関であった。従って,公務員に採用される権利を必要だとする要因として,それぞれにはまったく異なるメカニズムが存在していることがうかがえる。   

13.6 職業機会   

 次は日本人と同じあらゆる職業につける権利について検討する(表6.)。   

表 13-6 職業機会 
係数   Waldχ   
民族風葬式   −.3407    7.4973**  
官庁差別体験   .3524    8.4296**  
地域に役立つ   .3526    10.7633*  
定数   −.4137    .9102  
―2LL=480.865 χ233.960** Nagelkerke=.101 ** p<0.01 * p<0.05   
 「この地域のためになることをして役に立ちたい」という意識と,「日本人とあらゆる職業につける権利が必要だ」という意識が結びついていること,「日本の官庁,官吏から差別を受けたことがある」という経験と,「日本人とあらゆる職業につける権利が必要だ」という意識が結びついていることに,在日韓国人の歯がゆい気持ちを読みとるのは,やや読み過ぎだろうか。 

13.7 社会保障   

表 13-7 社会保障 
係数   Waldχ   
官庁差別体験   .3332    6.3917**  
北朝鮮愛着   −.3112    6.1089**  
統一祖国愛着   .3749    10.6441**  
地域に役立つ   .3861    9.0721**  
地域自我包絡   −.2418    4.3593*  
定数   -.1953    .1191  
―2LL=425.690 χ237.491** Nagelkerke=.118 ** p<0.01 * p<0.05 

 表7は,全体としてはもっとも「必要だ」と回答する人が多かった,「日本人と変わらない社会保障を受ける権利」についてまとめたものである。ここで特徴的なのは,「この地域のためになることをして役に立ちたい」という意識がプラスに,「この地域の悪口を言われたら,何か自分の悪口を言われたような気になる(自我包絡)」が,マイナスに効いていることである。「地域に役立ちたい」という意識と,「地域自我包絡」との間には,正の相関がある。つまり,地域に役立ちたいと考えている人ほど,自我包絡が強いという傾向があるのだが,ここではそれぞれが独立に働いている。   

 社会保障については,年齢や収入との関連が思い起こされがちだが,分析の結果,ほとんど両者の影響は見られなかった。ただし,社会保障については非常に多くの回答者が必要だとしているため,統計的にみて必要・不必要の別を規定する要因を特定することが難しくなっている。その点を留保して解釈する必要があるだろう。   

13.8 外国人登録証   

 次は,外国人登録証に関する2つの権利について検討しよう(表8,表9)。   

表 13-8 登録証不携帯 
係数   Waldχ   
出生1年お祝い   −.3200    8.2060**  
名前差別体験   .2705    5.8321*  
近所差別体験   .2666    8.3737**  
定数   −.2382    .3642  
―2LL=517.068 χ229.902** Nagelkerke=.086 ** p<0.01 * p<0.05  
表 13-9 登録証廃止 
係数   Waldχ   
年齢   .0240    10.5014**  
名前差別体験   .2259    6.0475**  
定数   −1.0535    8.3727**  
―2LL=670.490 χ220.527** Nagelkerke=.053 ** p<0.01 * p<0.05 

 登録証を携帯しなくてもよい権利,あるいは登録そのものをしなくてもよい権利を規定する変数の中で,特徴的なのは,「名前についての差別体験」である。名前のことで日本人から差別を受けた経験と,登録証に対する否定的な考え方とが結びつくのは,登録証によって通名と本名,日本名と民族名といった名前の問題が顕在化するからだろう。   

 12の権利の必要性を規定する変数群の中で年齢が,唯一,登録証廃止についてのみ登場する。しかし,登録証不携帯,登録証廃止については,説明変数による全体の説明力そのものがあまり強くなく,かつ年齢の係数は非常に小さい。   

13.9 帰化   

 次は,「日本への帰化が簡単に出来る権利」である。在日韓国人にとって国籍の問題は,きわめて重要な問題である。さて,表10からどのようなことがわかるだろうか。説明変数として並んでいるそれぞれの変数も重要だが,帰化の簡易化について,世代や年齢といった属性が,効果をもたないこともまた重要である。「日本への帰化などとんでもない」という評価が行われるとき,その「とんでもなさ」の原因を日本で生まれたから,あるいは年齢が若いから,といった属性に帰属させるとしたら,それは必ずしも正しくはないということである。   

 表10.の説明変数の中で,もっとも大きな規定力を持っているのは,「日本への愛着」である。「在日韓国・朝鮮人への愛着」と比較すると,前者はプラス,後者はマイナスの効果を持っている。その他の民族的な変数についても,経験的に理解できる傾向を示している。   

 地域参加の程度がプラスに働いていることについては,もう一歩踏み込んだ分析を待たねばならない。なぜなら,回答者が想定している「地域」が,在日韓国人の多住地域なのか,そうでないのかによって解釈が変わるからである。   

表 13-10 帰化簡易化 
係数   Waldχ   
教育年数   −.0677    3.3603  
民族教育年数(学校)   −.0949    6.9124**  
民族教育(学校外)   −.1842    3.9569*  
学校差別体験   −.2817    10.8070**  
生育地域愛着   −.2242    3.9743*  
日本愛着   .6767    30.1438**  
在日愛着   −.3445    7.9193**  
地域参加   .1922    5.6025*  
定数   .6947    .7888  
−2LL=627.999 χ281.130** Nagelkerke=.194 ** p<0.01 * p<0.05   
13.10 民族教育   

 最後の2つは,いずれも教育に関する項目である。   

 ここでもやはり,統一祖国への愛着が登場し,いずれも強い規定力を持っているが,あえて他の変数を中心に検討してみよう。   

 民族教育を受ける権利については,民族風還暦が強いマイナスの効果を持っている以外は,ほとんどの説明変数が,非常に納得のいくものである。   

 一般教育について目を引くのは,「15歳の頃の同胞集住状況」と,「現在の同胞集住状況」が,まったく逆の効果を持っていることである。つまり,15歳時点で集住の程度が強かったことと,一般教育を必要だと考えることに関係があると同時に,現在の集住の程度が強ければ,一般教育を必要だと考えないことに関係がある。ちなみに,15歳時点での集住状況と現在の集住状況の間には正の相関がある。15歳時点で集住→現在も集住という回答者と,それ以外のパターンの回答者の間に,どのような相違点があるのかを分析することによって,その意味があきらかになるかもしれない。

表 13-11 民族教育 
係数   Waldχ   
教育年数   .0801    5.0284*  
民族風還暦   −.4010    16.0446**  
名前差別体験   .4023    17.0796**  
在日愛着   .3552    7.5428**  
統一祖国愛着   .4832    25.0452**  
地域改善予期   .2259    4.4952  
定数   −6.0987    51.0549**  
―2LL=597.103 χ2114.853** Nagelkerke=.266 ** p<0.01 * p<0.05
表 13-12 一般教育 
係数   Waldχ   
15歳時点集住状況   .2283    8.2854**  
現在集住状況   −.2033    5.6640*  
民族風結婚式   .1946    9.2370**  
北朝鮮愛着   −.3050    10.9080**  
統一祖国愛着   .4384    24.1793**  
地域参加   .2234    7.9408**  
定数   −2.3612    24.6355**  
―2LL=639.320 χ279.328** Nagelkerke=.189 ** p<0.01 * p<0.05 
13.11 まとめ   

 冒頭に示した世代と年齢による分類は,別の分析法によって,多くの権利について必ずしも重要とはいえないことが示された。この結果は,世代と年齢といった固定的な属性だけではなく,在日韓国人の持つ多様な現実が,権利の必要性評価に反映されていることを示している。このことは権利についてのみならず,在日韓国人の直面する諸問題と分析的に接する上では,常に注意しなければならないことだろう。   




第13章 注  
  1. ただし,実際にこの項目に回答したからといって,そうした「帰化による権利行使」論を支持するとは限らないことには注意が必要である。むしろ,第10章「自尊心」で示唆されているように,いわゆる同化的帰化を望む人がこの項目に回答するケースのほうが多かったようである。 

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